前回のブログで12畳用のエアコンで30畳分の家を暖める方法を書きました。
しかし、よく読まれた方は気づいたと思いますが、設定温度22℃で20℃までしか暖められていませんでしたね。
これは理由が2つあり、ひとつはそもそもエアコンの能力が足りない。これは当たり前です。
もうひとつは家の断熱性能が足りないのです。断熱性能がもう少し高ければ設定温度まで室温を上げられるでしょう。
つまり家の断熱性能を上げればエアコンは小さくてもいいのです。
今日は家の断熱性能とエアコンの大きさについてのブログです。
これが12畳用のエアコンです。
36と書かれているのは3.6kwのことを示します。
エアコンの大きさを選定する為に必要な数値は
①UA値(W/㎡K)
②外皮(㎡)
③気積(㎥)
④換気回数(回/h)
この4つは省エネ計算時に分かる数値です。
櫛引町の家を例に計算をしてみます。
①UA値=0.51W/㎡K
②外皮=341.5㎡
③気積=268.782㎡
④換気回数=0.54回/h
まずは外皮総熱損失量(W/K)と換気損失(W/K)を求め、家全体の熱損失量を計算します。
外皮総熱損失量(W/K)= ①×② = 0.51W/㎡K×341.5㎡ = 174.165W/K
換気損失(W/K)= 0.35Wh/㎥K×③×④ = 0.35Wh/㎥K×268.782㎡×0.54回 = 50.799W/K
家全体の熱損失量はこの二つを足して
174.165W/K+50.799W/K = 225W/Kとなります。
さてこの225W/Kという数字、櫛引町の家は1℃につき225Wのエネルギーが損失されるということを示しています。
具体的にいうと外気温2℃の時に室内温度20℃に保ちたい場合、温度差は18℃ですので
225W/K×18K = 4,050W
気温差18℃の時、4,050Wのエネルギーが損失されることになります。
これは家の中で4,050Wのエネルギーをつくり出せば室内温度20℃を保ち続けられるという意味になります。
この「4,050W」は「約4.0kW」です。
この「4.0kW」という数字どこかで見たことはありませんか?
そう、14畳用のエアコンがこの4.0kWなのです。
14畳用のエアコンひとつで室内温度20℃を保ち続けられる計算になります。
櫛引町の家の床面積は約35坪(70畳)ですが、この14畳のエアコンひとつで家全体を暖められるいうことになります。
といっても家というのは部屋があり、廊下があり、トイレがあってエアコンひとつというわけにはいかないのが現状です。
そこで省エネで有名な兵庫の松尾さんがエアコン設定の略算式を公開しています。
必要暖房能力 = (Q値 + C値/10) × その部屋の面積× (設定室温 – その地域の年間最低温度)
UA値しかわからない場合は Q値 = 2.67 × UA値 + 0.39
ぜんぜん略算じゃないですね・・・。
これは省エネ計算が出来る建築士に聞きましょう。
櫛引町の家のLDKを例に計算をしてみます。
UA値=0.51W/㎡K ですので Q値=1.75W/㎡K
C値=0.8㎝2/㎡
LDK=30㎡(約18畳)
さいたま市の2020年の年間最低気温=マイナス4.6℃(気象庁データベースより)
ちなみにC値は計算することはできません。
気密測定をすることにより算出される結果です。
よって必要暖房能力 = (1.75 + 0.8/10) × 30㎡× (20℃ –マイナス4.6℃) = 1,350W = 1.4kW
1.4kWのエアコンは存在しないので、一番小さい6畳用のエアコン(2.2kW)で18畳のLDKは外気がマイナス4.6℃の時でも室内温度20℃を保ち続けられるということになります。
自分の家のリビングが18畳だからといって家電量販店に行って「余裕を見て20畳用のエアコンを買いましょう」なんて店員に勧められたらオーバースペックで高い買い物ですよ。フェラーリで住宅街をトロトロ走るようなもので効率も悪いです。
なぜこんなことになるのかというと、このエアコンの畳数は50年以上も前の無断熱の家を根拠として定められた基準で未だに変わっていないのが理由です。
もっとも家電量販店はエアコンが効かないというクレーム回避と売上の為に大きなエアコンを勧めるという理由もあるでしょう。
買う方も大は小を兼ねる気持ちがあるかも知れませんが、エアコンに限っては大は小を兼ねません。
適切な大きさのエアコンを設置しないとその性能は発揮されませんのでご注意を。
エアコンを選ぶときは店員よりも省エネ計算のできる建築士に相談しましょうね。
それに電力中央研究所というところが「エアコン設定支援ツール」を公開しています。
https://criepi.denken.or.jp/asst/
こちらも参考に。